全国建設青年会議
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第 III 部 総 括

実行委員長 鈴木 康仁
 総括セッションを開始させていただきます。
 第二部での議論を踏まえ、1人1人が青年建次郎として、又自社の経営を考えて、全員でこの年末を超え、来年再来年と企業の継続を考えていかなければいけません。そのためのヒントを掴んでいただきたい。そんな時間を願っています。
 総括セッションでは、民間企業の立場から元本田技研(株)代表取締役専務「下島啓亨」様にお越しいただいています。続きましてコメンテーターに、国民・市民の視線・声を代表してNHK日本放送協会解説委員「山田伸二」様でございます。そして官の立場で国土交通省大臣官房技術参事官「望月達也」様でございます。
 皆様の経歴につきましては、時間の関係上、会議資料8ページを御覧いただくことで紹介に換えさせていただきます。本セッションのコーディネーターも、引き続き小野先生にお願いします。なお、第二部の討議に参加いただいたパネラーの皆様にも、引き続き参加をお願いします。それでは、小野先生よろしくお願いします。

ケース総括 コーディネーター 小野 桂之助氏
 それでは、第3セッションにはいります。
 先ほど申し上げたように、3人のコメンテーターの方には、一部始終御覧いただいておりました。
 それでお願いしてあるのは、それぞれの違った立場からどういう感想をお持ちになったかがひとつ、もうひとつは、青年建次郎さんへの提案ないしは問題を共有しているお集まりの皆さんへの提案、このへんは少しフレキシブルにいきたいと思いますが、助言・提案的なことがありましたらそれもお願いしたい。それぞれ5分くらいでお願いして、そのコメントに対してまたパネラーの方から何か反論なり、応答があれば手を上げていただくという形で進めたいと思います。時間に制約がありますので、コンパクトにまいりたいと思います。
 それでは下島さんから、よろしくお願いします。

講 評 コメンテーター 下島 啓亨氏(元本田技研(株)代表取締役専務)
 下島でございます。よろしくお願いします。
 わたしは、40年近く自動車関係の開発から生産、購買、そして部品の供給元までをカバーしてきた者でございます。自動車も土木建築も物作りという点では共通していて、同じ物作りではないかと思っておりまして、今日御縁があってお話をさせて頂くについては、そのような観点から意見を申し上げたいと思います。
 最初に、小野先生から率直な印象とかコメントをというので、三つ「おやっ?」と思ったことを申し上げます。
 最初の一点は、このドラマはよくできていると思いますが、2年間赤字で先々の需要や発注が激減して見通しもないという中で、同類の企業の数が減るか、或いは著しく需要が蘇るか、がなくては会社は成り立たない。そして現実、二年赤字になっている。という割には、ずいぶんのんびりしているな、というのが私の率直な印象です。もう少し危機感をもって、お友達と飲みながら「おまえどうしよう」とか言うのが普通ではないかと思う。社長であればですね。というのがまず一点です。
 この物語では発注のお客様が「官」しかないということですが、その発注先について「あれっ?」と思うのは、最後に説明がありました「経審」というのが発注先を決める評価基準になっているようですが、関心がありまして、この表を見ますとほとんどが財務指標なんですね。で、非常に不思議に思うのは、発注先を決めるのに物作りの私どもの感覚では、真っ先に品質(Q)コスト(C)納期(D)が大事なんですね。そういうのをちゃんと作れる良い会社さんに対して発注をするという考えですし、更にQCDだけではなくてD(開発)M(管理)ということも付け加えて決めさせて頂いておりますが、それを非常に不思議な感じで伺いました。
 それからもう一つは、最後にどなたかのご発言で、民間の建設業と、公共事業を主体的に受ける皆さんのお立場はちょっと違うんだ、というあたりがどう違うのかがよくわからないな、なぜ違うのだろうか、という疑問を素朴に感じました。
 そのへんをベースに、小野先生のお許しがあるかどうかわかりませんが、青年建次郎に代わりまして私ならどうするみたいな事ををちょっと申し上げて行きたいと思います。

 いろいろ代表者の方々からコメント・意見の交換がありましたが、こうしたらいいというのは一言でいうと、「今の器の中」でお考えだな、という感じを受けております。企業経営というか青年建次郎の社長としての経営も会社を成り立たせるというのも、基本は 売上−原価=利益でして、そして従業員やステークホルダーにちゃんと報酬を与え、残りを将来の投資のために貯めて使う、そして企業を発展させていい仕事を世の中のためにするというシンプルな原理なんですね。皆さんの意見はそれぞれ正しいと思うのですが、先々に対して大事な、「売上を上げる」ほうのところはあまりお考えになっていないのではないかという感じを受けました。つまりコストダウンで色々リストラをやるとか、合理化をやるとかはありますが、下請けの仕事までやっていいかどうかみたいな程度でありまして、私の観点はこの原理・原則からいうと、構造的に需要がなくなっているんですから、企業経営というのは需要のあるところを物作りなり、なんなりで、対応していく、サービスでも対応していく事が大事で、需要の無い所で待ち受けていても成り立たないわけです。従って、その需要をどうやって喚起するか、取り込んでいくかということですから、競争にうち勝って、まあ入札で勝ち取るというのもあるでしょうが、それだけでなく私どもの感覚ですとそこの分野の需要が無くなったら、需要を開拓するという視点ややり方もあるのではないかと思うのです。今までそういう物が作られたり、使われたりはしていないけれども、新たに開発をして提供すれば、潜在需要が花開いて世の中の人々の役に立つというような、開拓まで含めた需要の喚起というのを考える訳ですね。そういう意味では、そこらへんについてもう少し深く考えたほうがいいんじゃないかという印象をもちました。つまり、設計図面と発注が下りてこない限りは、果報を寝て待つという感じではこの先は無いのではないかということでありまして、具体的に言いますと、谷口技監のお話の中で感じたんですけれども、三者会議をやったほうがよいとおっしゃいましたね。つまり「官」の方が考えて、橋を架けるとか、ダムを作るとか、そういう企画がありますね。何をやろうかという、そりゃ世の中のためになるという、何のためにやるかという議論になりますが、それからそれを受けて設計会社が設計をする訳でしょ。そして皆様が、主に施工を受け取るということなんですが、物作りの立場からいうと、これがバラバラで、三者バラバラで良いっていうことは、ほとんどないんですね。このコミュニケーションが、ものすごくうまく行くことによって、よい物作りができる、製品ができる、事業ができる、というふうに私は考えます。ですから、まあ卑近な例がなんかの声の大きな人の意見で、ここの湾に橋を架けたらいいっていうんで、橋を架けちゃってそれを誰も使わない、こんなの不便でしょうがないとか、使わないような道が出来ちゃったりしたら企画としてはまずいですよね。それから設計するのに、その橋を架けるのに、岩の上なのか、砂の上なのか、設計の上手下手というのは、その土地の特性であるとか、施工の方法によって最適に図面が変わるべきですから、作る施工の人と設計のコミュニケーションが非常に大事です。その三者が融合していかないと、世の中に対していい物作りはできないというふうに、私は強く思っておりますので、そこがちょっと不思議に思うんです。
 で、そこから発しますと、もう少し皆様の経営の体質というのを施工だけでなくて、少なくとも設計と施工をパッケージにした付加価値の高い仕事を取り込んでくるようにできないのかな、というふうに私は思います。ましてや、地域においての企画力まで含めて提案できたらもっと良いというふうに思います。つまり、地元のあの河川の土手の橋の根元のところは、もし何年前の大水がきたらば、かなり決壊するぞ、というところまで考えたらば、しかるべき立場の人に提案をし、設計をし、施工もするというようなパッケージで事にあたるというようなことができないのかしら、と思うわけですね。
 これは、谷口技監のお話はマクロ経済の中で他の国に比べて投資が少ない、とか国のレベルでおっしゃっておられましたが、県であるとか、市であるとか、村であるとか、あるいは民間企業の単位で或いはもっと遡れば、個人の庭先だとか、ブロック塀の倒れ、まであるわけですから、私はその売上を上げていく、需要を喚起するという意味では「官」の発注を待つだけでなく、またどうやって受注を取るかというだけでもなく、なんでも仕事はやるぞ、というようなことで需要を喚起し、仕事を取ってくる、50人の従業員に対して仕事を与える、それによって色々な経験から技術力も経験量もコストダウンの知恵も湧いてくる、というふうにもっていくべきではないかというふうにまず基本は思ったわけなんですね。
 皆さんの言葉尻の中で提案型にならなければいけないとか、技術や特徴を持って事にあたろうとおっしゃったのは、正にその通りでありますから、より深く具体的に考えて、やるべきではないかというふうに強く思いました。

 それから、先ほどQCDの話をいたしましたけど、さてそれで需要なり発注を得られたとしましても、競争力が他社に対してなければなりません。従って、QCDDMと私どもは言っておりましたが、品質・コスト・デリバリー(納期ですね)そして開発力(設計、提案力ですね)、そしてマネージメント、(管理、即ち)いかにトップの考えが健全で、お家騒動もなく、社員が皆さんやる気があって、いい仕事をスピーディーにやる、というようなマネージメントができているかどうかということですね。もちろん、その中にはファイナンスの財務指標も入ってきます。それを常々磨き上げておくということが受注にも繋がりますし、競争力になるわけです。その中で皆さんがおっしゃっているようなリストラについては例えば、あまり仕事をしない高給取りがいるというのは、あまり良いことではありませんからそれをよく考えた上でなさるのはよいことだと思います。

 そして最後になりますけど、そういう企業体質を付け、技術特徴を付け、提案能力のために設計能力までを含めて需要をとって来るというのが私の見解になりますけども、今の皆さんの会社のお立場があまりにも体質的に違うんだ、企業文化が違うんだという場合には、青年社長が自ら経営方針を述べて、需要のなくなった公共事業の請負だけでない仕事に広げていく、変えていくという脱皮の姿勢を強く打ち出して、自ら先頭に立って、動き出さなければいけないというのが私のコメントであります。
 この企業文化を変えるのは大変ですけれども、こういう機会に、十年以上たって二分の一の発注になって、それでも生き長らえているのが本当かな?本当はそうじゃないんじゃないか?と思ったりもしますけども、その企業文化や脱皮するいい機会だと考えてやり始めたほうがいいのではないかと、その時に最後のコメントとして、世の中の先を見て、先取、先行というふうに考えていくことが、脱皮していく上ではいい。例えば、環境問題であるとか、防災というふうに皆さん口々におっしゃいますけどそれの緊急対応のスピードの問題みたいのまで含めて、やる余地は色々あるのではないか、技術もマネージメントもですね。そういうことを含めて、スピードを上げて事のあたるということが非常に大事だということを、私のアドバイスとさせていただいて、コメントを終わりたいと思います。
 ありがとうございました。

コーディネーター 小野 桂之介氏
 時間の関係もありますので、一通りコメンテーターの方からお話を伺ってレスポンスに入りたいと思います。山田さんお願いいたします。

講 評 コメンテーター 山田 伸二氏(NHK 解説委員)
 山田です。NHKで経済の関係のコメントをしております。ただし、私のフィールドはマクロ経済とか金融なんで、この業界についてはほとんど素人なんで、ピントはずれの話になるかもしれません。それはご容赦ください。その代わりと言ってはなんなんですが、実は私の実家が神田神保町で古本屋をやっております。父が八十四歳になりまして、早晩私が後を継がなきゃならないということで、今日の登場人物とまったく同じ状況におかれております。なおかつ、古本業界というのは、今誰も本を読まなくなりましたので、つまり若い世代はまったく本を読まなくなった。そうすると、それでなくても人が少なくなるのに、本を読まなくなるってことは、もう売れないということで、いつ潰れるかわからないということで、同じだというと怒られるかもしれませんが、建設業界とまったく同じ構造不況業種です。そういう観点から、いろいろ興味深く伺いました。その二つの立場が、ごちゃまぜになってのコメントになりますが、ご容赦ください。大きく二つ、伺っていて感じました。
 一つ申し上げたいのは、小野さんがまとめられた五年後の展望のところで、一つ気になったのですけれども、他の会社が廃業して、倒産して、いずれ需給ギャップが縮小するでしょうと、そうするとまあなんとか息つけるんじゃないかと、こういうシナリオがありましたが、これは絶対ありえないシナリオだと私は思っています。これは幻想です。つまり、ある時からというか、デフレを経験してから、物の値段の決まり方というのが、明らかに変わりました。昔は原価があって、いわゆる原価があって、それにマージンがのっかって、それが売値と、こういう構図になりましたが、デフレを経験する過程で、消費者がこの値段じゃなきゃいやだと、そっちから値段が決まっていくように変わりました。
 一番わかり易いのが、飛行機の運賃です。今、一万円以上出そうなんて人は、よっぽど金持ちかビジネスマンです。普通の人達は、一万円で日本中飛び歩いています。で、そんなことでどうして成り立つのかと、当該の事業者は言うんでしょうけども、現実にそのサービスにはそれだけの値段しか払わないと、消費者が言ったとたん構図が変わりました。おそらく建設業でも、同じような問題を引きずっていると思うんです。もちろん、むちゃくちゃな原価を無視した極端なことはないにしても、少なくとも淘汰されて需給バランスがなんとか回復して、それで息をつけると、そういうふうには思わないほうがいいと思うんです。ライバルが少なくなるかもしれませんが、少なくなったとしてもコストは下げられます。ですから、経営を取り巻く環境ってのは決して甘くないと、ですからそのバラ色の夢はまず捨てたほうがいいと私は思っています。それから第二点は、これはまさに私の問題とラップするんですが、企業には寿命っていうのがあります。未来永劫存続する企業というのはありません。ですから、自分の会社が、あるいは皆さんの会社がいったい何年もつのか、何年もたせるのか、どうもそれをちょっと考えたほうがいいんじゃないかという気がしてならないんであります。つまり、もう先がないんだとしたらば、上手に早く片付けたほうがいいと思います。働いている人にとっても、経営者にとっても、傷が小さくてすむ。しかし、この会社は十年もつことができる、十年もつことができるという、きちんとメドがたったらそういう対応をすればいい。ですからそこは、自分の会社の将来、これについて冷静に、相当冷たく考える必要があろうかと思っています。で、私自身、自分の家業は、私が生きている間だけしか責任持たないと、従業員の人にも言っているんですけどそれはおそらく、他の企業も同じじゃないかと思います。当たり前ですけど、短期で終息させようと思えば、力がある限り赤字出してもかまわないわけです。だけど常識的に考えれば、短期的にはプラマイゼロまでもっていくって必死にやらざるを得ないんだろうと思うんです。しかし長期的に経営を維持しようとしたらば、それは単なる必要条件でしかないんだろうと思うんです。
 皆さんがさっきからいろいろ議論された、一つ一つはいちいちごもっともなので、それはどうぞ全部おやりくださいってことなんでしょうけれど、問題はそのあとで、プラマイゼロにしたあとどれだけ収入を増やすか、今下島さんが言われたまさにそこのポイントなんだろうと思うんです。でその時に、多角化だとかいろいろあるんでしょうけれど、それこそ皆さんの企業が本当に力を持っていたら、海外にどんどん出て行かれたらいいんだろうと思うんです。仕事がない国内にしがみついていたって意味がないので、本当に力があれば、どうぞいくらでも無限の可能性がありますと、それをおやりになればいいんだろうと思うんです。今日のテーマで、技術と創意で今の状況をブレークスルーするんだと、まさにそうなんだろうと思うんですけども、私がささやかに存じ上げてるんで言うと、例えば穴吹工務店ってゆうところこれはまさに、独自のビジネスモデルを作って成功した。これはまさに「創意」なんだろうと思うんです。もう一つは「技術」。これは皆さんそれぞれの技術をお持ちになっているんで、それをやる。で、その二つをですね、やっぱり自分の持っている能力をよく見極めて、それをギリギリつめて、ビジネスチャンス、つまり儲けの場所を広げると、それしかないって言うことで、非常に単純ではありますけれども、自分の会社が、いったいどういう力をもっていて、どういうふうにもたせるのかと、そこからいろんな問題を整理されたらどうかなという気がしました。以上です。

コーディネーター 小野 桂之介氏
 ありがとうございました。それでは、望月さんお願いします。

講 評 コメンテーター 望月 達也氏(国土交通省総合政策局技術参事官)
 はい。今日、私、ちょっと安請け合いして来てしまったのですが、どうゆう立場かをちょっと話しておきますと、今私は、大臣官房技術参事官で、総合政策局というところを担当しています。ただ今日はちょっと別なかたちでお話をしたいと思います。
 私は約八・九年前に九州地方整備局の熊本工事の所長をやっておりまして、その時も今とまったく同じ状態でした。これから建設業はどうなるんだというところで、局の企画部長から建設業の活性化のため「九州建設青年会議」の立ち上げを頼まれて立ち上げた本人でございます。ですから今日、九州の方ずいぶん来ていると思いますが、その後私も地域作りとこの建設業をどうするかということは、ずうっと心の中の一つの課題として持っておりましたので、それを含めて話をしたいと思います。当時からそうなんですが、我々の今の建設業法の仕組みなり入札契約制度というのは、すべて明治から戦後のですね、高度経済成長期を通じて、物を作っていく、つまりインフラを作るということに対して、量的な生産をしなければいけない時代に生まれたものであります。そういうニーズの中で、仕組みができていますから、今我々が持っている仕組みというのは、そういうバックグランドの中にあったわけです。ところが私が約十年前くらいになった時に、実はもう公共事業を下げなければいけないという時代が、来ていたわけなんです。ただそのあと、違った状況が生まれた。それはなにかというと、フローとして経済を活性化するという状態がうまれてしまったわけです。ですから我々官側も非常に苦しみながら、人は減らされる中で仕事はドンドンやれという状況ができてました、一方でそれは建設業界からみると、少しカンフル剤的にですね、寿命を延ばすような形になってしまった。当時私が思ったのは、今後必ずこの一・二年で事業量は減ってくると、だから今のうちに何とかしなきゃいけない、と言っていたんです。ただし私が思ったのは、我々当時の建設省の立場から見ても、どちらにしても今の業者の数は多すぎる、これを減らさなきゃならない、減ることになりますということでした。減ることになるためには、良い企業に残ってもらわなくてはいけないということで、方法はよくわかりませんでしたが、それから当然減るわけですから、我々は建設業というもの、仲間内だと思っていますので、どうやってスムーズランディングするかとかということでした。
 或る企業の経営者から言われたんですが、企業というのは収入の内の主力に半分を使っていく。さらにその二分の一、四分の一を或る企業の派生したものにチャレンジをしていくんだと。残りの四分の一でまったく、一つのなんていうかセンサーとして何かを考えていくんだと言われました。私は確かにあるものをですね、自分の会社をもし経営者としたらですね、変えていくとしたら、全部を投げ打ってやるなんてことはとてもできない、そうすると四分の一の余力をもたなきゃいけない。余力を持つことによって、その余力がスペシャリティーを持ち、ノウハウを持つということに繋がっていかなければいけない。その四分の一の余力は何かというと、例えば合併とかで余裕なりを持って別の方向も探すということです。ただ今日、いろいろお話を聞きますと合併ってなかなか難しいということで、方法としては持株会社なのかなって気はいたしますけども、少なくとも何らかの余裕を持つためにはですね、同じ規模の会社でやっていたんではできないだろうと思ったわけです。今考えますと、じゃあそこは何で乗り切るのかということについては、いくつかのヒントがありました。一つは自分のスペシャリティーの延長線上で考えるというと、建築業とかですね、まあもう一つは、例えば環境ビジネスなんかもそうなんですね。例えば、土を浄化するとかですね、いろんなことがあります。そういう意味で、環境ビジネスまたは3Rなどリサイクルを含めた、環境ビジネスの一部ですけど、そういうことに入っていくっていうのは、一つかと思います。それからもう一つ私が気が付いたのは、これは兵庫県の理事をやっている時にちょっと体験したんですが、やはりPFIですね。PFIって言うのはおもしろい仕組みで、SPCというスペシャル会社を作って、そこに弁護士がはいり、会計士がはいりということで、いろんなノウハウを入れて、自分の会社と別のところで、リスクも切り離してやっていく。先ほど言い忘れましたが、あるものに踏み出すには、私は余裕とですね、つまり余裕とリスクのヘッジというものが二つ要るんだろうと、当時思ってました。で、そのリスクをどうやって回避するかというのは、余裕を持つということと、或る意味では、自分の本体と切り離して、いろんな英知を集めてやるということで、リスクがヘッジできるかな、とも思っています。先ほど、下島さんなり山田さんがいわれたように、海外に展開するということについても、最近仕事がらですね、海外国際協力なんかも勉強しているのですが、聞いてみるとですね、意外なことに、ゼネコンのある人に聞きますと、海外まあ東南アジア出ていきます。当然建設業ですから重層構造できていますが、当然下請けを使わなきゃいけない。それから、専門業者を使わなきゃいけない。どんな業者を使ってるんでしょうか。当然私は、それは現地の下請け使っているから危ないなと、どうやってリスクを回避しているんだろうと思ったら、何のことはない、下請けというのはほとんど親会社が欧米の会社なんだそうです。
 つまり、欧米の会社というのは信頼できるところがあると同時に、日本人の、日本の企業に頼むよりコストが安いんだそうです。そのノウハウは、当然どこかで作って船で輸送する時の大きさの問題とか、いろんなものがあるんだそうです。建設業のこれからの展開ということでは、海外への展開なり、農業への展開、それから環境への展開、いろんなものがあるんですが、どうしても最後のところはノウハウとリスクヘッジという問題をどうするのかというところがなかなか難しいんだろうと思っています。そこのところをずっと考えていくと、経営もしたことの無い私が言うのもちょっとあれなんですが、そんなことを少し思いついたわけでございます。
 日本というのは、実は一億二千万人の人間がいるわけですね。今ヨーロッパはどうなっているかというと、ヨーロッパというのはEUになって、EU指令を出してどんどん統一化を図ってますが、基本的に国境をなくすためのことをやっているわけです。でも、日本はですね、一つの地域が一国に相当する。オランダやデンマークに相当するくらいのGNPを持っているわけですね。ヨーロッパは、そこに国境があったためになかなかうまくいかなかったので、それをシームレス化しようということで今一生懸命努力している。日本を考えてみると、一億二千万がそれだけの国力を持つ地域があって、シームレスな国なんですね。法律上・規制上ほとんど国境が無いという状態。ですから、私は何か一つそういう意味では、何か知恵が出てくるんだろうというふうに期待していますが、ちょっと時間もないんでここまでにしておきたいと思います。

コーディネーター 小野 桂之介氏
 はい。ありがとうございました。あの今、三人のコメンテーターから貴重なコメントをいただいたわけですけれども、期せずして、ちょっと手元で整理をしてみましたら、多少ニュアンスはちがいますけど、お三人とも、かなり同じポイントをついて、メッセージを発していらっしゃるように思います。
 一つは、お三方とも「まだあんたがた甘いよ」と、「もっと危機感を持て」と、これは下島さんそうおっしゃいましたし、それから山田さんの場合には、私が皆さんからの意見をまとめたなかの一部で、需給ギャップが数年で縮小するなんて思わないほうがいいと、むしろこれはヤバイと思ったら早くやめたほうがいいよって、それくらいの厳しさを持ちなさいってことでありますし、それから、望月さんのお話は、どちらかというと、これからいずれにしろ企業数は減る、そういう意味ではトータルの需給のギャップはどこまで縮まるか別にして、多少縮まっていく。しかしそこの時に残るべき企業にならないと残れないよと、そういう意味ではやはりニュアンスとしては、今日の我々のディスカッションはまだもっと、現実を厳しく見なけりゃいけない。これも一つのメッセージですね。その延長線上でもあるんですが、もっと積極的に踏み込めとか、打って出ろっていうか、むしろ防御でなくて攻撃的な、特に受注拡大・売上拡大っていうか、そういうフロンティアを開拓していく積極性を持たなくてはいけないというのが、たぶんお三方のもう一つのメッセージだというふうに思います。下島さんはそれを、谷口技監の三者会議にもからみましたけども、もう少し、ちょうど自動車の部品メーカーがやっているようにっていうんですかね、実際に生産加工する、建設でいえば、施工するというだけでなくて、設計まで能力に取り込めと、それからそれが付いたら、さらに企画までですね、自分の能力を拡大していくと、まだ公儒にしろ民需にしろ、まだ開拓する余地ってあるんじゃないかと、こういうことをおっしゃいましたし、それから山田さんは、ほんとに生きる価値があるだけ、実力・技術力が高まるんだったら、何も日本だの自分の地域にいないで、もっと広くドメインをひろげて、海外に出るくらいの気概をもってやらないと、この国際化時代生き残れないんじゃないのって、そういうようなメッセージでありますし、望月さんも、もう国際化、少なくともアジアとはおっしゃいませんでしたけど、そういうリージョナル程度のボーダーラインがとれてくってのは必然的な流れだって、そうするとしかし、そこではまた固有のリスクとかノウハウがあるので、国際化、わかった、行こうってことでなくて、先ほどの下請けの議論も我々したわけですけど、海外工事に関しても、下請け的な仕事で出て行く、というようないきかたから入って、力を付けていくというようなこともある。いずれにしても、指摘されるポイント、多少具体的なニュアンスは違いますけど「もっと現実を厳しく見ろ」というメッセージと「もっと踏み込んで攻めるというか、積極的に考える、それが経営者の仕事じゃないか」っていうようなメッセージでは、お三方共通していたように思うんです。と、投げかけられていますが、順番にはいきませんので、どなたか、この矢を受ける側からですね、「いや先生さはさりながら」って話でもいいし、「恐れ入りました」でもいいんですが何かコメントをどうぞ。レスポンスして下さい。お手を上げていただいて、どなたでも結構です。
 はいどうぞ、前田さん。

パネラー 近畿 前田氏
 貴重なご意見、ありがとうございました。まったく、おっしゃる通りだと思います。先ほど第二部でもあったんですけども、トヨタさんの下請けは、しっかり利益出してるじゃないかという話がありました。
 やはり、営利団体と営利団体の付き合いというのが、そういう構図を生んでいるのではないかと思います。やはり、我々もですね、発注者側もですね、施工者は役所の一部分であると、施工担当者であるという感覚をぬぐえてないので、今の状況が起きていると思います。
 本当にこの状況で、業者数を半分にするべきだと、お国がお考えでしたらね、もう赤紙を出していただいてですね、お宅はもう建設業の許可を取り消しますと、お宅の財務内容では続けるのは無理ですという精査をしていただいてですね、赤紙を出してもらうしかないんじゃないかというふうに、業者数を減らすというのであれば、それくらいのことをやっていただかないと減らないと、今の合併の特例措置では誰も合併はしないでしょうし、ほんとに業者数を減らして地元建設業として生きていくのであればですね、それくらいのことをやっていただくぐらいのことをしないと、不良債権、建設業界が抱える不良債権が増えていくだけという結果になると私は思います。

コーディネーター 小野 桂之介氏
 おっしゃる通りです、と言いながら切り返すのが、前田さんのワザだっていうのがさっきからわかりましたけれども、これはまた望月さんから再レスポンスしていただきましょう。

コメンテーター 望月 達也氏(国土交通省総合政策局技術参事官)
 まあ私が言いたいのは、業者数が減るっていうのは、工事が減ったから半分というのではなくて、その需給ギャップを調整しないと、入札契約に関しても、今非常に無理をしています。でもこれはある意味で、需給バランスをしない限りどうしても正常にならないんですね。それが一点です。
 もう一つは、その小さな小さな企業がたくさんあっても、余裕が生まれないんですね。たぶん余裕が無ければ、スペシャリティーと先ほど言った別のものに出て行くというものができない。そういう意味で、やはりそこはやんなきゃいけない。でしかもさっき言ったように、下請けでも日本の企業が、ゼネコンがヨーロッパの企業を下請けで使っているという状態を見ると、人件費の問題だけではないなと、何かそこは違うんだろうという気がしたわけです。

コーディネーター 小野 桂之介氏
 他に何か、どなたか、レスポンスありませんか。今の点でも結構ですし、他のご指摘の点でも結構ですけど。どうぞ、山本さん。

パネラー 関東 山本氏
 この全国建設青年会議の第一回準備会の後ですね、「今、経営を考える」というふうに中部のほうからご提案がありました。今までの全国大会とは違って、まさしく今タイムリーに我々が必要としていることをですね、はじめさせていただいて、青年土建という一つのシュミレーションをご提示をいただいて、何回か見て、ある意味先ほど僕、下島さんのお話を聞いて、やっぱまだまだ甘かったなっていう、非常に反省をしているところがあります。自分自身が、逆に言うと公共工事もらえてきたというようなことから、まだまだ脱することができない自分。やはり、製造業の方々っていうのは非常に針の穴を通すような、そういった精度の技術を持ちながら、ほんとに薄利多売じゃないですけども、細かい経営をされている。僕の友達もいるんですけど、そういう感覚です。我々はともすれば、大きいお金を扱ってですね、その分は非常にマヒをしちゃってるのがあるのかなと。
 実は今日、私あの神奈川県のど真ん中なんで、朝一回会社来てからこっちに来たんですけども、朝ちょっと大きい声出してきたんですよね。なぜかって言うとですね、実行予算が上がってくるんですよね。実行予算が上がってきて、私自身も技術者出身ですから、ある程度の現場の状況だとかというのは判ってるつもりなんですけど、どうも自分の中で、機械的にはできずにですね、まあこの現場ならしょうがないや、てゆうようなことで印を押してきました。この現場はもうちょっと出るかなって思ってたんですけど、でもやっぱそういったことのちょっと自分自身の甘さ、特に青年土建のこのプロフィールをですね、の中の会話が、あれは私とどなたかが会長会議の中で、そういった状況を見せることによって、文章を読むだけじゃなくて、皆さんにおわかりいただけるということで、中部さんにわがままいって、DVDを、後ほどご出演の方に一杯多くお注ぎをいたしますけど、作っていただきました。まあそういった、彼らも下島さんにこれだけはご理解いただきたいんですけども、経営者になって、端くれといいますか、まだオヤジもいたり例えばですね、私もそうですが、例えば家族であったりしても、経営環境の中で、自分はこうしたいんだけど理解が得られない、みたいなのがあったり、自分の中で非常にこう若い経営者ながら、がんばって、危機感を少しは持ってやっているってこと、そしてそういった今五十二万社もいる業界の中で、非常に特化したもの、差別化したもの、やりたいんだけど何やったらいいのか、言ってみればラグビーの中のモールにいるような人達が、結構大多数の状況のなかで、今日みんなこの大会が始まって以来、約五百名弱の人間がですね、何かしらの宝物を持って帰ろうと思って、今日来ていますんで、そこだけのご理解はいただきたいというふうに思います。

コーディネーター 小野 桂之介氏
 大変議論も盛り上がってきて、あと一時間くらい続けたい気もするんですけども、全体のスケジュールも押してきておりますので、あと二・三分私がまとめ的なことを申し上げて、このセッションを終わりにして、後のお話は懇談会に譲りたいと思います。
 それで今、三人のコメンテーターからも中身的に大変示唆に富んだご指摘をいただいたと思います。やはりですね、先ほど山田さんからご指摘あったように、どのくらい本当に需給ギャップが埋まるのか判りませんけど、望月さんがご指摘のように、何らかの形でもうこれ以上続けられないと、赤紙をもらわなきゃいかんかどうかわかりませんけどね、いずれにしてもどうも倒産ないしは廃業なり、生き延びるための合併統合なり、いろんな形で企業数がある程度縮小していって、それが需給ギャップが、そりゃ供給を需要が上回るまで下がるわけはないですね。だけどそれが、仮に二倍の需給ギャップがあったとすると、二・三割のエクセスキャパシィティーのところぐらいまでいくかどうかというプロセスが、これからあるんだろうと思うんですね。
 その時に結局、それは日本全国の五十二万社強の建設業者の数がやはり、わかりません、三十万になるのか、四十万になるのか、もっとこないだ大手ゼネコンの会長が「五万でいいんじゃないか」とか、すごいことを言っていましたけども、何らかの形でそういう形が起こるってことは、誰かが統合するか、消えるかしなきゃいけない。これはもう厳然たる事実だと思う。問題は先ほどらいお話があるように、その時に残る十万社か二十万社か五万社か知りませんけれど、そこに誰が残るのか。で、それがどういう会社が残るのか。これがとても大事な問題の一つ。それから残った会社が、それから何をするのか。それはやはり、社会全体の立場からすると、社会全体として残ってほしい、残るべき、神様がもしいたとすると、あんたとあんたとあんたと残りなさい、あんたはもう退場して下さいって、そういうような姿にどうやって、官民協力しながらもってくのかって問題だと思うんですよね。それが、本当は残るべき企業が、つまんないバリヤがあるためにつまずいて、そこで消えざるを得ない。で、残んなくていい会社が残るって、こういうことだって、現実問題起こりうるわけで、それをいかに減らしていくのか。それはやはり、技術力であり、ドメインをもし自分の生存領域を地域に限るんであれば、地域があの会社には無くなってほしくない、むしろ拡大してほしいっていう会社になるかですよね。それがもし、うちの地域じゃなくて、全国ないしは海外まで打って出るなら、そこで必要とされる会社にどうやって変貌していけるのか、そうでない会社は消えていくってメカニズムを、しかしそれを日頃の受注競争を通じながら、それから個々の企業の企業内努力を通じながら、それがどうやって精度よく実現していくかていうことが、今我々に突きつけられている問題だろうと思うんです。そういう意味でやはり、企業はやはり経営者が、先ほどご指摘があったように、ビジョンを決めて、うちはこういうシナリオで生き残っていくんだってことを決める。これは経営者しかできない仕事。それからやはり、官の方も今日いらっしゃるので、お願いしておきたいのは、やはりそこでフェアーな、企業としてはルールに従ってゲームするよりしょうがないわけで、残るべき会社が残るようなゲーム設定というか、ルール設定ですね、基準も含めて、そういうものを一緒に考えていただかないと、後は民間だよってふうにはいかないと思う。今あと一・二分で終わりますが、大学なんて苦労が無くていいだろうと思われるかわかんないけど、私はよく言うのは、大学と建設業界は酷似しているんですね。今もう全入時代っていうのは、実は行きたい、その九州の人が北海道の大学も行けるっていうのでチャームバランス、もうここんとこずっと十何年間、お客さんの数が着実に減って、向こうこれから十八年間着実に客の数が減るってことが、確実に判っている業界であります。もう一方で、文科省は規制緩和でゆるくしたもんですから、まだ今でも供給は増え続けているんです。毎年、新しい大学ができて、今度株式会社大学もOK、新学部OK、学科増設・定員増、前は厳しい審査があったけど、で後は適者生存でダメなとこが減ればいいんだって、こういう形で今文科省は、行政指導やっているわけですね。そういう中で、今中部大学は、とにかく地域に愛される大学、地域に中部大学はつぶれないでくれって言われる大学になろうっていうことで、そういう生き方で、今、去年より今年は受験生が増えている。とてもいいニュースを皆さんに申し上げて、ぜひ今日の議論の中から、皆さんの経営にこれから役立ついくつかのヒントが含まれていたことを祈念いたしまして、本日のこのケーススタディー終わらせていただきたいと思います。コメンテーターの方々と、パネラーの方、どうもご協力ありがとうございました。

実行委員長 鈴木 康仁
 小野先生、大変ありがとうございました。また、コメンテーターの先生方にも大変貴重なご意見をいただきまして、本当にありがとうございました。私ども、建設青年会議のメンバーにはですね、知恵と、そして青年としての若さと、また優秀な社員、これが揃った会社ばかりであるというふうに自負をいたしております。今日の教訓を生かして、来年・再来年ずっと社会に貢献できる企業を目指して参りたいと考えております。本当に今日はありがとうございました。
 それでは、これをもちまして「全国建設青年会議第十二回全国大会」会議の部を終了させていただきます。