全国建設青年会議
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第 II 部 ケース・スタディ

ケーススタディの質問
質問1
青年土建(株)の近年における業績悪化はどのような原因によってもたらされているか。
・パワーポイント・スライド<質問1:業績悪化の原因構造>
質問2
このまま放置すると5年後、青年土建(株)はどのような状況になると予想されるか。
・パワーポイント・スライド<質問2:5年後の展望>
質問3
貴方が青年健次郎社長の立場にあったとしたらどのような対策をとりますか。また、その対策によりどのような変化が期待されますか。

各ブロックの質問に対する意見
北海道
 短期的対策としてビジネスホテル、介護施設等への賃貸事業または、社長の人脈・情報収集(銀行マン時代を生かして)を使い、飲食などのフランチャイズ事業による即収入を得る。
長期的対策として総合建設業を目指し、建築を主体とする企業との合併を行い民間建築分野に進出する。

東 北
 利益率の確保と固定費の削減
 利益率の確保いわゆる工事原価の削減は経験のある工種、材料については詳細な検討がなされているが、未知の工種、原価については不十分ではないかと考えられる。この点を重視して削減に取り組む必要がある。完成品質にいたる工程品質の改善を行えば、経費構造を変えることで大きな効果がある。

関 東
 売上高10億円の確保と組織の改革
 社内の体制、組織をコミュニーケーションが闊達とした人たちで作る。余剰人員の削減、遊休財産の処分をしてスリム化を図る。地域の建設業が必要とされている専門技術分野(下水道のメンテナンス、リフォーム等)をもつ組織形態にしていく。経営目標に数値目標をしっかり立てて経営を行っていく。

北 陸
  1. 徹底してコストダウンを図る
     役員半減、直接雇用の作業員を解雇して下請け専門の別会社を設立する、総務経理部門の人員を半減、社員全員の成果主義の人事考課や給与制度への移行を行い、事業規模に見合ったコンパクトな組織を作ることにより一般管理費を抑制する。また、少数精鋭かつ成果主義により社員の意識改革を図る。
  2. 土木部門完工高10億円以上を維持するべく技術者の量と質を確保する
     元請会社としての技術力を磨き、総合評価入札を勝ち抜いていく。収益力を高め、経営審査1000点を維持し、M市、X県の入札参加資格を保持する。期待できる効果は技術力でいく方針を掲げることで社員のモチベーションを高め、結束力を高める。
  3. 安易な事業の多角化はしない
     多角化をすることにより経営体力が消耗しまた、社員のモチベーションが下がることも懸念される。

近 畿
  1. 本社をM市に移転する。
     M市の受注チャンス拡大を図る。X県の受注機会は現状維持、Y市からの受注は期待しない。
  2. 下請工事を積極的に受注する。
     年間を通じた仕事量の確保をし低価格時代に対応する。そのためには直営作業者を充実させる。若手技術者には施工管理と現場作業を両方やってもらう。
  3. 建築工事への参入
     優秀な土木技術者に建築の勉強、資格の取得をさせ、また、他より建築技術者を入社させる。
  4. 資産の有効活用
     社長の経歴・人脈を生かしてデベロッパー的な資産活用、民間建築のトップセールスを行う。
  5. 人員削減と配置転換
     社長以外の役員は退職、社員も不要な者は退職。優秀な40歳代の技術者及び事務営業社員を新役員とする新しい経営陣とする。
    以上を瞬時に発展的に行うためにM建設との合併をする。ただし、両社長の友人関係を断ち切り、経営者パートナーとして構築できるかに掛かっている。

中 国
  1. モチベーションの向上
     地域で建設業が営む意義、建設業が物を作り顧客に喜んでもらうということを社員に徹底することで“やる気”のある社員が増え、これからの対策の効力が上がることに通じる。
  2. 技術力の強化
     これから変化する入札制度に対応すべく、外部のノウハウ、人材の活用を含めて会社の技術力を上げる時である。その結果、総合評価入札では有利となり、受注量の増加及び受注価格の上昇が期待される。
  3. 固定費の削減
     余剰人員を削減し、組織をスリム化し固定費を低減させる。

四 国
 リストラ策として会社規模を10億円程度に想定し、役員・営業系社員を半減、技術系社員を25名程度にし、一般管理費を9000万円程度まで減らして、今後の事業量にあった規模の会社に縮小する。経営展開として他地区できれば県外の同規模で考えを共有できる会社との持ち株会社を含めた合併の検討をする。社内では社員全員が営業マンとして現場近辺の仕事を拾い、待機ロスをなくし、また、良い対応をして会社の存在意義を示すような意識改革をする。

九 州
 リストラ策としてOB社員の退職、45歳以上の賃金カット徹底、査定制度への移行等を行い、一般管理費を1億円程度に低減することにより今後5年間をシュミレーションを行った結果、三年後には経常利益が赤字となり存続が難しいこととなる。また、リストラの影響から社内のモチベーションの低下も避けられず、内部崩壊のおそれもある。よって廃業または新規事業をするにあたっても一旦清算をし必要な人材を求め、いろんな選択肢の中で再出発をする。

中 部
 本業強化と新たな経営の柱(民間建築)の2本柱で生き残る。
 今後の発注形態が総合評価方式の拡大が予測される中、それに対応した技術力の強化(技術提案力、工事成績のUP等)を図る。技術管理部門を設立して体系的に技術ノウハウ、情報の蓄積・管理を行い、現場での施工管理能力、設計変更対応を含めて全社的な総合技術力を付けていくことにより、受注の確保・収益率の改善を図る。
 新たな経営の柱として民間建築とし、民間建築主体の会社と業務提携または持ち株会社を設立していく。これにより管理・営業部門の統一、効率化を図り、さらにシナジー効果をもって営業拡大、将来的には事業展開の幅を広める。
 会社組織の見直しと固定費の削減を図るため経理総務部門、直接雇用の高齢者の対象にリストラを行い40名体制とする。同時に社内表彰制度を設けて社員のやりがい、モチベーションを高めるような企業風土を作りながら、2本柱で収益UP及び支出DOWNにより黒字体質に変えていく。

まとめ

討 論
(小野先生)  今、挙がった対策・行動の中で反対意見のあるものは
(北陸:大橋)  M市への移転は反対。我々は地域の基幹産業であり、地域のために事業をし、地域に育てられてきたという使命感がある。公共事業は官民が一体となって生産機能を果たす構造であって、今のしくみがM市移転に有利に思えても、いずれはあるべき姿、制度に戻ってくると思っている。そうであればY市に基盤を置くべきである。
(近畿:前田)  M建設との合併で本社はM建設本社、青年土建本社はY支店として存続させる。Y支店は民間建築をメインとして営業していくのでY市と縁が切れるのではない。
(北陸:大橋)  Y市は新しい市長で安ければいいという制度で行っているがいずれ是正されると思っている。私は使命感を大事にしなくてはいけないと思っている。Y支店では入札参加できないし、北陸でいえば除雪作業、他の地域であれば災害復旧にいち早く対応することが大事であり、そういう使命感を引き続き持ち続けることが社員のモチベーションを維持することになるのではないか。
(小野先生)  大橋さんは仮に提携するとしても合併ではなく、それぞれ独自性を持って資本提携なりをすると考えるのか
(北陸:大橋)  アライアンス(企業連合)というような考え方で望むべきである。
(小野先生)  他に追加の意見のある方は
(四国:冨田)  この程度の会社で共同経営は無理である。オーナーは一人が良い。建築と土木は同じ建設業でありながら共通点が少ないということもあり業務提携で止めておいた方が良い。また、下請け工事の積極受注とあるが公共工事が主体とならざるを得ず非常に単価が厳しい状況で赤字になる可能性が高いので、小さくても地元の民間工事をして公共に頼らない仕事を求める方向が良いのでは。現場の給料は現場が稼ぐ。一般管理費は多角化をしてでも間接費を減らしていくようする。私はしばらくは公共土木工事は地域に対するボランティアとなる可能性が高いと感じている。
(小野先生)  合併問題とM市への移転について他の意見は
(北海道:工藤)  自社の有利な合併を目指し、M建設とは合併しない。
(東北:平野)  合併については各社の技術レベル、給与体系、福利厚生面の違い等かなり吟味して慎重に取り扱わないといけない。
(関東:山本)  建設業者で合併して成功した例は聴いたことがないので反対。
(中国:原)  地方の建設業は社長が体を張って会社を代表しているので、単純に合併は難しい。慎重に行うべきだ。
(九州:辻)  民間建築主体の会社と公共土木主体の会社は文化的に違う部分があるので融合は難しいのでは。人的相乗効果も難しいのではないかと思う。
(中部:河津)  持ち株会社を設立する。個々の会社の企業風土を保ちつつ、お互いの営業エリアにメリットがある。両者がWIN-WINの関係を築く必要がある。将来的には多角経営を持ち株会社のもとに行えるのではないか。
(小野先生)  下請け工事の積極的受注については慎重に考えるべきではないかという意見に対して提案者としては
(近畿:前田)  下請け工事では予算の合わない工事は請けなければいい。請けたとしても当初の条件と合わなければ交渉して値段を上げてもらうとか、工事を打ち切ればいい。下請け工事は儲からないという考えは捨てないといけない。公共土木だけでなく民間工事でも請ければよい。
(四国:冨田)  地域の違いがあるのでは、高松ではコストだけの受注競争になっているので利益の出る工事はない。
(北陸:大橋)  元請としての能力の高度化が求められており、同じく下請でも高度化が求められている現状では領域が違ってきているのではないか。闘う領域をどちらかに絞っていく。私は元請で勝ち抜いていく戦略が正しいのではないかと考えている。
(小野先生)  その他に反対する意見は
(関東:山本)  多角化は慎重に行うべきでは。生業として建設業を営んでいくにはコストダウン、社内のスリム化、物造りの大切さをどう表現していくか等が大事ではないか。
(北海道:工藤)  経営事項審査において技術者は置いとかないといけない、経営体質を考えると財産は持たないほうがいいとか考えるとお金が必要である。それを取れるかわからない、また、取っても儲かるかわからない工事を待っているわけにはいかない。だから安易ではなくしっかりとした計画の基に多角化をしていく必要があるという提案である。
(小野先生)  本業を続けていくには何で稼ぐにも利益率を上げ、Y評点をあげていかなければならないということを考えると使える遊休資産を活用すべきでないかという考えですね。山本さんいかがですか。
(関東:山本)  この会社は自己所有地があるので可能ではないか。経審があるので安易にリストラはできないこともあり、余剰人員で人材派遣会社をやるのも良いのではないか。
(小野先生)  多角化について他の意見は
(東北:平野)  この会社はフリーキャッシュフローとして3億円程あるので、簿外でSPC(特別目的会社)を作ったらどうか。
(北海道:工藤)  まだ余力のあるうちに経営者自らそういう勉強をしてやっていく必要がある。
(小野先生)  経営事項審査が足かせとなっている現状が見て取れるが、どう対応していくか
(近畿:前田)  経審には非常に問題がある。待機人件費25%というのは企業ではなく建設業以外では考えられない。粉飾は赤字決算が不利になるから起こる。過去十年間の納税額等とかも評価してほしい。
(北陸:大橋)  中小と大手が同じ手法で行われていいのか。来年大きく変わるということなので期待している。青年土建としては生き残るために1000点が必要であれば、それを目指すのはやむを得ない。
(関東:山本)  経審の目的がわからなくなっている。建設業許可、経審、総合評価それぞれフィルターの役割で整理が必要なのでは。
(東北:平野)  経審は中小には苦しい制度で、多角化で初期投資をするとガタガタになる。単年度決算ベースにしてもらい、会計士のお墨付きがあれば評価してもらえる様な制度にしてほしい。
(北海道:工藤)  過去からの資産が負担になるような経審では困る。もっと技術力等を評価する制度になってもらいたい。
(中国:原)  経審が企業にどういう会社になりたいのか問いかけているのではないか。地域に投資すると経審ではマイナス点になるような実状は汲んでほしい。
(四国:冨田)  地方の小さい会社を評価するには人為的操作で点数の上下がありすぎる。完工高を勘案しないシステムが必要である。
(九州:辻)  経審が絶対的評価基準になっているようで怖さを感じる。技術力とかの能力とかが評価されるシステムが必要ではないか。
(中部:河津)  改正され正確な評価には近づいているような気がする。主観的点数を加味して評価してほしい。
(中部:中村)  大手と地元中小と同じ土俵で評価することに無理が生じる。今度の改正にはより実態に合うように期待している。
(小野先生)  完璧なシステムはないが、あるシステムに合わせていかなければならない。次の発展につながるシナリオに舵をとっていくのが経営者の責任である。明日からの自分の会社の参考になればこのセッションの目的が達成されたことになる。